運営者について

鎌倉に住む一人として、
できることをしたかった。

As one resident,
I wanted to do something.

鎌倉に引っ越してきてまだ間もない頃、ある記事が目に留まりました。当時、鎌倉を訪れる観光客の平均消費額は約6,200円というものです。日帰りでお昼を食べて、お茶をして、お土産を買って帰る、そのくらいの予算感だろうかと想像しながら、観光客が鎌倉に何を求めているのかに興味が湧きました。

一方で、地元で知り合った人たちと話すと、多くが人混みを避けるように暮らしていることに気づきました。江ノ電の混雑や道の渋滞で外出が億劫になり、効率よくといえば聞こえがいいですが、必要な用事だけ済ませて家で過ごす人が多いようでした。近所の居酒屋で常連さんたちと飲みたい気持ちはあっても、値段も混雑も気になって足が向かない。そんなモヤモヤを抱えている人は少なくないようでした。

そんな折、よく通りかかる鎌高前の踏切に交通整理係が配備されるようになり、SNSでは観光客と住民、それぞれの立場からさまざまな声が上がっていました。一生に一度その景色を見たいと遠方から訪れる人と、日々の暮らしを営む住民。その間にある溝を目にしたとき、これは踏切だけの話ではないと感じたのです。鎌倉にもっと元気になってもらいたいと。

私自身、子どもの頃から20歳までハワイで暮らしていました。ハワイは観光業で成り立つ土地で、世界中から人が訪れる場所に暮らす誇りもありました。物価は決して安くありませんが、そこには「カマアイナ割引」という文化があります。地元に住む人を地域全体でリスペクトし、住民が地元のビジネスを支える仕組みです。ローカルとビジターが共存するその形が、ずっと頭に残っていました。

鎌倉ならではのことができないか。

映画やドラマで、常連さんが店に入るなり「いつもの!」と注文する。そんな場面を見たことはありませんか。店の人が好みを覚えていて、言葉を交わす前からいつもの一品を用意してくれる。その姿に、ちょっと憧れたことのある人も多いはずです。SNSで「何回通ったら、"いつもの"って注文していいんだろう?」と話題になるくらい、「いつもの」は少し特別な言葉なのだと思います。

「いつもの」と言える場所には、温かさがあります。顔を覚えてくれている人がいる。自分の好きなものを知ってくれている。今日も自然に迎えてくれる。そこにあるのは、商品やサービスだけではなく、人と人とのつながりです。

地域のなかに、誰もが「いつもの」と言える場所がたくさんできたらいい。日々の暮らしに、安心して帰ってこられる場所が増えたらいい。そんな想いを込めて、私たちは「イツモの」と名づけました。

鎌倉を訪れる観光客は年間およそ1,600万人。これだけ多くの人に訪れたいと思ってもらえる街に暮らせるのは、素直に幸せなことです。ローカルとビジターが共存しながら、観光客が来るほど地元が潤い、街全体が元気になっていく。そんな循環を、住民の手で作りたい。それが「イツモの」を始めた理由です。

イツモの代表
新井 一慶
鎌倉在住(2023年〜)

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